
7歳を迎える前に読みたい。犬猫のメンタルケア
犬や猫も人と同じように年を重ね、高齢になると心と体の両面で変化が訪れます。足腰の衰えや病気のリスクが高まることは多くの飼い主さまが実感されていると思いますが、見落としがちなのが 「メンタル(心の健康)」 です。
高齢の犬猫は、加齢に伴う感覚の低下や生活環境の変化、飼い主さまのライフスタイルの影響を受けやすく、心に不安やストレスを抱えやすくなります。そしてそのストレスは、体調不良や行動の変化につながることもあります。
私たちは、長年にわたり犬猫の「美と健康」を支えるケアを提案してきました。その経験からも、年齢を重ねた後こそ外側のケア(被毛・皮膚)と内側のケア(体と心)をつなげる発想が大切だと強く感じています。
ここでは、高齢の犬猫ならではのメンタルケアの重要性と、飼い主さまが日常で実践できる具体的な方法をご紹介します。
なぜ高齢の犬猫のメンタルケアが必要なのか
加齢による心の変化
一般的に、犬猫は7歳頃(※諸説あります)からシニア期に入るとされます。加齢によって以下のような変化が心に影響を与えます。
・感覚器の衰え
聴力・視力・嗅覚が弱まると、周囲の情報が得にくくなり不安が増します。
・学習・記憶力の低下
認知症に似た症状(夜鳴き、徘徊、トイレの失敗)が現れることがあります。
・体調変化のストレス
関節痛や内臓疾患が慢性的なストレス要因となります。
メンタル不調が及ぼす影響
犬猫の心の不調は、以下のように身体や生活全体に影響します。
・被毛のパサつき、皮膚トラブル
・過剰な吠え・鳴き声、攻撃性の増加
・飼い主さまとの絆が弱まることによる孤立感
「心の健康」と「体の健康」は表裏一体
犬猫の心が穏やかであるほど皮膚や被毛の状態も安定しやすいということです。逆にストレスが高い仔は、毛艶が落ちたり抜け毛が増えたりする傾向があります。だからこそ、シニア期にはメンタルケアを意識することが不可欠です。
メンタルケアって具体的にどうしたらいいの
特別なことをしなくても、飼い主さまが日常生活の中で少しだけ意識するだけでできるものが多いです。以下の3点を日常に取り入れるといいでしょう。
安心感を与える
日常の生活リズムをできるだけ一定にする
知っている匂いや声で落ち着ける環境を整える
適度な刺激を与える
新しい経験は少しずつ、無理なく与える
脳を使う遊びやコミュニケーションを継続する
飼い主さまと一緒に過ごす時間を増やす
スキンシップや声かけを意識的に行う
「触れる」で安心感を伝える
犬と猫のメンタルケアの違い
犬と猫は、習性や社会性が大きく違うため、メンタルケアのポイントも変わってきます。
犬は群れで生活する動物なので、飼い主さまとの絆をとても重視しますが、猫は基本的に単独行動をする動物です。テリトリー(安心できる空間)を最重要視しています。
犬のメンタルケア
散歩の工夫:
若い頃ほどの距離は必要なく、外の空気や匂いを感じることがとても大切です。足腰が弱い場合は短時間でも問題ありません。抱っこで散歩やカートも効果があります。
分離不安への配慮:
高齢になればなるほど飼い主さまに依存しやすくなります。留守番時はラジオやヒーリング音楽を流すと安心感が増します。
おうちケアを通じた安心:
ブラッシングやシャンプー時に「優しい声かけ」「ゆっくりした動作」で、心地よい時間になるよう心がけましょう。
エイジングケアに特化したシャンプーを選ぶと安心感が得られやすいです。負担を軽減するためにドライシャンプーやフォームシャンプーもおすすめです。
猫のメンタルケア
安心できる縄張りの確保:
シニア猫は変化を嫌うため、お気に入りの場所を維持することが大切です。高い場所へのジャンプが難しくなるので、段差を減らしたキャットタワーを用意しましょう。
環境エンリッチメント:
短時間でも遊びや狩猟本能を満たす工夫をしましょう。例えば、おやつを隠して探させる遊びは、とても楽しく充実した時間になり脳の刺激にもなります。
多頭飼育時の注意:
シニア猫は若い猫に押されてストレスを感じやすい傾向があります。トイレ・食器・寝床は「頭数+1」で配置すると一層安心です。
犬猫共通のメンタルケア
飼い主さまの態度が最大のケア
犬猫は飼い主さまの感情にとても敏感です。飼い主さまが落ち着いた優しい態度で接すると、それだけで安心感を与えられます。
音や香りを利用する
ペット用ヒーリング音楽や、安全なアロマ(ラベンダーなど)でリラックスさせることが出来ます。
「触れる」ことで伝わる安心
グルーミングは被毛ケアにとどまらず、心のケアにも直結します。「お手入れの時間を心地よい絆の時間に変えること」を強くおすすめします。
メンタル不調のサイン
これらの変化は、体の病気だけでなく心の不調のサインである可能性も考えられます。
・食欲や排泄の変化
・夜鳴きや徘徊
・触られることを嫌がるようになった
・毛づくろいが減り、被毛が乱れてきた
犬猫のケアは「体」だけではなく「心」にまで目を向けることが、真の健康につながります。安心できる環境、適度な刺激、そして飼い主さまの優しいまなざし。これらすべてが犬猫にとって何よりの薬となります。「外側のケア」と「内側のケア」をつなぐことが、犬猫と飼い主さまの笑顔につながります。目には見えない心の健康を意識して、より豊かなペットライフをお過ごしください。